日本精神保健看護学会 第24回学術集会・総会
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会長挨拶
日本精神保健看護学会 第24回学術集会・総会 大会長
松下 年子 (横浜市立大学大学院医学研究科看護学専攻 教授)
 平成26年度の日本精神保健看護学会第24回学術集会の大会テーマは、「嗜癖を知って看護に活かす−精神保健看護とアディクション問題」です。今年5月に米国で改正されたDSM−Xでは、これまでの物質関連障害(「物質」依存・嗜癖)と病的賭博(「行動」依存・嗜癖)が一つにまとめられ、「物質関連・嗜癖障害」という概念でくくられました。対象に依存しないではいられない心性や、そうした心性に基づく不適切な行動を将来的には、対象の如何にかかわらず「嗜癖」という言葉で表すようになるのかもしれません。いずれは人への依存も、その中に包括されることになるかもしれません。
 さて、看護職者が健康な人、精神疾患を抱えた人の心のケアを遂行するにあたって、そのケアの質が、対象者との関係性に依拠するのはいうまでもありません。対象者との間で、本当の意味での「自立した人同士の関係性」をいかに実現できるかが鍵になるのではないかと考えます。そうした観点からは、嗜癖や依存症を抱えた人への看護の原則は、私たちが精神保健看護を展開するにあたって、たくさんの示唆を提供してくれるものと信じています。なぜならば、依存症看護は対象者の自立をとことん促すことを目指すものであり、その結果として看護者は、自分自身の自立性にも直面しないではいられないからです。そのような中で否が応でも「他者を支援する」ことの本質がみえてくるでしょうし、それを掌握した上で対象に向かわざるを得ないからです。
 先日、超党派のアルコール問題議員連盟によって「アルコール健康障害対策基本法案」がまとめられました。多岐にわたるアルコール関連問題に国が対応するための、基盤ともいえる法律の制定が目前に迫っています。この背景には、飲酒問題に関して発展途上国であったわが国にあってもやっと、「依存症は社会が生み出す病気である」ことが周知されてきたことがあります。また、アルコール関連問題が当事者やその家族の精神保健にいかに悪影響を及ぼすかを、これ以上否認するわけにはいかなくなったという事情もあるかもしれません。アルコールと自殺の関連が指摘されてからも久しく、アルコール関連問題は今や、国民の精神保健を考えるうえでの大きな課題の一つといえるでしょう。
 他にも、薬物依存症の問題や虐待、暴力の問題、自傷行為や共依存・性依存の問題など、精神保健が対象とする嗜癖問題は数限りなくあります。そしてこれらの問題や現象は、常に進化しており、他の精神疾患や障害との重複を通じてまずます多様化しています。今こそ看護者は、依存症や嗜癖を知り、その対応のエッセンスを修得し、依存症のみならず広く精神保健全体の課題や問題解決に向けて生かしてほしいと願います。
 当日は、より多くの皆様にご参加いただけることを祈願しております。
2013年8月
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